空白 3

たーむ  2006-12-24投稿
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…助けた、はずだった。

確かに、尚の右手は少女の右腕をつかんで、自分の懐へと引き寄せている。
それなのに。

少女の体は浮いているのだ。その背に生えた、純白の羽をゆっくりと動かしながら、ふわふわと。

「…え?」
思わず間の抜けた声を上げた尚は、現状を把握できていない。
しかし、助けた相手は確かに生きもので。

「うわー、うわー!私、こんなにカッコイイ助けられ方したの、初めて!」

思わず抱きついたままの相手を見下ろすと、がばっと顔を上げた少女とばっちり目が合う。
少女の瞳は、これ以上ないくらいキラキラしていた。
そしてその瞬間、尚は己の条件反射を恨んだのである。


「俺が嫁、だと?」
尚は眉間に深い皺を寄せて、隣を歩く少女を見る。
ついてくるな、と何度言っても聞かないので、すでに諦めた。
内心、恩を仇で返すんじゃねぇよ、ウチまでついてくるつもりじゃねぇだろうな、と迷惑しきりだ。
「だって、メスが子供産むでしょ?オスが不明でも、メスは必ずその子の親。オスはメスがいないと子孫も残せないし。だから、メスが嫁にもらってあげるの」

…尚はさすがに開いた口が塞がらなかった。

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