血塗れの彼を馬車に運んで傷の手当てを始めた。傷口を消毒して包帯を巻いて、助かって欲しい一心で皆が祈っている。でも、傷口が全然塞がらない…包帯が血で赤く染まって行く…ライカお婆ちゃんが、彼の傷口を調べていた。
「毒じゃな…毒で傷口が腐りかけておる。直ぐに解毒の塗り薬を作るぞ」
その言葉で、馬車の中の空気が変わる…傷の手当てをしていて気が付いたのが、凄く身体が熱くなっていて熱があると思った。出来る範囲で止血をして行く。直ぐに解毒の薬が出来て傷口に沢山塗って、直ぐ包帯を巻いてみる…少し包帯に血が滲んでいたけど血が止まったみたいだった。
「今日が峠じゃな…この若者の命を強さに賭けるしかないの…」
ライカお婆ちゃんの言う通りだと思った。でも、アタシの中では助かると感じた。判らないけど、そんな思いがずっと心にあった。
アタシは彼の傍に居て、ずっと看病しようと思っていた。熱が下がらないままだと、危険だもの。アタシは冷たい水で何度も布を曝して、彼の熱が下がって欲しい一心だった。手が赤くなって痛かったけど、大怪我を負って怪我人の彼が一番大変なんだから。
三日三晩、彼の傍に付いていた。傷口を解毒の塗り薬で手当てをして、新しい包帯を巻いた。何度も何度も同じ事の繰り返しだったけど、少しずつ傷が良くなっているのが判った。
少しずつだけど、解毒の薬を彼に与えて行く…土色をしていた肌が段々と無くなり、肌の色が元に戻って行く。彼の眠っている姿にアタシの心がざわめいていた。
なんだろうこの感じ…今まで無かった感覚を始めて味わった。
四日目の朝、続いていた高い熱が下がっていた。彼の苦痛に似た寝顔は穏やかになっていて、凄く嬉しい…後は目覚めるのを待つだけ。早く目覚めて欲しい。そうすれば、安心できるから。