私は歩道に何か黒い塊を見つけた。一匹の黒猫の骸であった。
其の足はありえない方向にへし曲がり。
其の体からは臓物がだらしなく飛び出ていて。
其の頭は無惨に砕かれ血が溢れていて、其の目は潰れ、其の耳は千切れ、其の口は縦に開かれ、其の鼻は姿を無くし…
そして其の猫は完全に終わっていた。証明するまでもなく、説明するまでもなく、無論、見るまでも無く、終わっていた。
終焉、終焉、
終焉、終焉、終焉、終焉、
終焉終焉終焉終焉終焉終焉終焉終焉終焉終焉終焉!!
しかし其の猫は存在していた。其処に圧倒的に存在していた。決定的に存在していた。絶対的に存在していた。
だから私は
両の掌を静かに合わせ
黙祷して
ビデオを借りに行ったのだ。
帰り道。
其の猫は消えていた。
其処には小さな花束が置かれていた。
嗚呼猫よ
お前は死してなお
其処に存在しようというのか。
嗚呼猫よ
お前は死してそうして
私の中に生まれたのだ。