「随分寒く成ってきましたね」
「雪が降ってますよ」
道端で、向かい側から歩いて来た近所の、お爺さんとの会話。
家路に向かう私は、変な錯覚に、堕ちてしまった。
はて?
今、確かに近所の、お爺さんと認識して居たのに…
誰だったのか、思い出せないで居たのだ。
「参ったなぁ〜、歳取ったのかな。」
いや、確かに見覚えの有る、お爺さんだったな。
暫し、考えながら歩いて行くと、自宅とは反対の方角へと歩いて居る事に気がついた。
慌てて、自宅へと向かうと…
自宅の前に、さっき会った、お爺さんの姿が有った。
取り敢えず、声を掛けた。
「お爺さん、この家に何か、用事でも在るのですか。」
「息子よ。お前も歳だな、ボケてきたみたいだな。」
老人は笑った。
私も80歳かぁ。
高年齢層の多い時代に成ったものだ。
見上げた空には、人工太陽が、夕焼けを造り出して居た。