君に送る言葉

深山暁  2006-12-30投稿
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朝。
コーヒーの薫りで目が覚めた。 カフェインは薫りだけでも効果があるのだろうか…。 まだ寝ぼけた頭でそんな事を考えながら体を起こす。 「おはよう。朝ご飯食べる?」 沢子がトーストをかじりながら聞いてきた。 「ああ。」
と、あくびをしながら答える。
いつもと同じ平凡な朝。いつもと変わらない退屈な日。
―であるはずだった。
沢子は慣れた仕草で僕の朝食を用意して、再びトーストを食べ始めた。 「ねぇ、直君。話があるんだけど、それ食べ終わったら聞いてくれる?」
「今じゃ、だめなのか?」
こうして向かい合ってるのだから今言えばいい。と、続けたら、
「真面目な話なのよ。」
と深刻な顔で言われたので、変だな。とは思いながらも、それ以上は何も言えなかった。
朝食を片付けると、沢子が座った。 嫌な沈黙を拭い去れないまま沢子の前に座る。
俯いているせいで表情は読めない。 「直君…私、別れたい。」
「え?」
別れたい。響きだけが頭に残った。混乱しながらも、なるべく優しく聞いた。
「どうして?」
「好きな人がいるの。その人と…結婚しようと思ってる。」
けっこん?意味がわからない。まさか、そんな単語まで出てくるほどの関係の人がいるのだろうか…。
僕と付き合ってる間に?
ショックで頭の回転が鈍くなっているようだ。
しかし、どこか冷静に受け止めている自分もいた。
「相手は、誰なんだ?」
そう尋ねると、今まで淡々と話していた沢子の顔に、一瞬、動揺の色が見えた。
「僕の知ってる人?」
「…。」
沢子は口を固く結び、体をこわばらせていた。
言えない。と、体全体で表現していた。
僕はつい、問い詰めるような口調になる。
「僕には聞く権利あると思うんだけど。」
「―。」
沢子は以前として口を開こうとしない。
叱られている子供のように目を伏せ、小さくなって震えていた。
「沢子。」
びくっと沢子の体が大きく揺れた。
上目遣いで僕の顔を見てくる。
そして、ゆっくりと、微かに濡れた唇が動いた。
「隆君。」
小さな声だがはっきりと聞こえた。
隆。それは、僕の親友の名前だった。



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