レイと少女は疲労のあまりすぐにその場に座り込んだ。 レイは少女の息が整うのを待って少女に話しかけた。 「ケガ…大丈夫?」 だが少女は俯いたまま何も答えない。 レイは少女が震えているのに気づいた。 「寒い?ここ海の上だしね」 レイがそう言うと少女は何かブツブツとつぶやき始めた。 「…ぶたれちゃう…セブルさんに……どうしよう…今日は鞭で打たれるかもしれない…」 セブルとはどうやらあの宿屋の主人のことらしい。少女は寒さで震えていたのではなく宿屋の主人に恐怖していた。少女はついに泣き出してしまった。 レイは小さな体を震わせ泣いている少女を抱きしめた。 「大丈夫…セブルさんはもういないよ。もう誰も君のことをぶったりしない。」 少女はその言葉で落ち着いたのかすぐに泣きやんだ。 「…ほんと…ですか?」 少女は上目遣いでレイを見上げた。 少女の顔は殴られたあとが残っているものの整っていてきれいな顔立ちをしていた。レイは思わず見とれてしまった。 「ほんとだよ。そういえば名前言ってなかったね?俺はレイ、君は?」 「私はリオです…」 リオが名前を言い終えると突然ガチャという音をたてて扉が開き船員らしき男が出てきた。 「お前らだろ?金も払わず船に乗ったっていうガキどもは?」 男はレイの腕を強く掴んだ。 「ちょ…ちょっと待てよ!放せ!」 レイは男の手を振りほどこうとしたがなかなか振りほどけなかった。 「待ってください」 突然後ろのほうから声が聞こえて振り返るとそこには見知らぬ男が立っていた。 「その子達は私の知り合いだ。」 男はそう言うと船員に札束を渡した。 「おいおい、このことを見逃すわけにはいかないんだよ。こっちも仕事なんでね」 船員は笑いながら言った。すると男は船員の持っている札束の上にさらに札束を重ねた。 船員はそれを見てしばらく考えた。 「まぁ、このことは黙っといてやる。だが次の港で降りてもらうぞ。」 そう言って船員はニヤニヤしながら去っていった。 「世の中結局は金だよ。君達も覚えておいたほうがいい。私はマクベス。君達は?」 マクベスと名乗ったその男はこちらに振り返り深々と頭を下げた。