激走!バレンタイン危機

沢森奈々  2007-01-01投稿
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「あいつらは、女の恐さ知らねえから、勝手なこと言ってられるんだよ!」
「その女嫌いも、治らねぇなぁ。」
口調のわりに、久は楽しそうだった。
「お前…おもしろがってるだろ?」
「まあな。」
あっさりと肯定されると余計に腹が立つ。
そんな悠吏の心情を知ってか知らずか、久はのんびりと言った。
「こんなに、ゆっくり話し込んでていいのかよ?女の子達、来ちゃうぜ?」
そう言われて、自分の今おかれている状況を思い出した。
「そうだった!」
(逃げなければ!)
悠吏は急いで上履きに履き替えると、下のチョコを拾おうともせず駆け出した。
「あ〜あ、もったいね。どうすんだよ、このチョコ。」
そんな悠吏を見送りながら、久はゆったりとため息をついた。
その口元は、もちろん楽しそうに綻んでいたが…。

俺だって、好きで女嫌いになったわけではない。久のようなマネは無理でも、一般男子並みにはバレンタインを楽しみたい。
俺の女嫌いの原因は、俺の家庭環境にある。いや、違うな、家庭環境じゃなく、姉だ!絶対あいつらのせいだ。
俺は四人姉弟の末っ子。
しかも、上は全員女だ。
小さい時から、何かとおもちゃにされてきた。
女嫌いの原因を作ったのが、姉なら、チョコ嫌いの原因を作ったのも姉だ。
忘れもしない小学四年のバレンタイン。
その当日の一週間前、2番目の姉が、好きなやつに渡すチョコを作ると言い出した。
それに参戦して、他の姉達も一緒に作り始める。ここまではいい。オープンな仲良し家族の一コマだ。
問題は、作った試作チョコの行方だ。なんと、勝手な姉達は、作るだけ作っておいて太るから自分達は食べたくないと言いやがった。当然、それが回ってくるのは俺のところで、それから一週間。俺は、姉達の作るチョコを食べさせられた。
ミルク、ビター、ホワイト、アーモンド入り、トリュフ…。
最後は吐くしかなかった。
それだけならまだマシだったかもしれない。
バレンタイン当日、俺は毎年のようにたくさんチョコをもらった。
いつもなら、単純にうれしくて我慢してでも食べていただろう。
しかし、その年はもう見るのも嫌だった。
だから、なるべく断れるだけ断って、ロッカーの中に入ってたものはコッソリ友達にあげた。
その現場を姉に見られたのがまずかった。うかつだったと自分でも思う。

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