何処に。

由美子  2007-01-04投稿
閲覧数[306] 良い投票[0] 悪い投票[0]

私の故郷は星が綺麗に見える、北の方の寒い地域にある。

18で初めて家を出た。神奈川にある大学に合格して一人暮らしを始めるためだった。

高校の頃くらいから、私は家を出たくて仕方が無かった。毎日の様に私の将来について親と揉めていた。そんな毎日にはもううんざりだった。

生まれて初めて家を出た春。あんなにも出たかった家。なのに。なのに電車の中で思わず涙が滲んだ。18年間生まれ育った場所。見慣れた田舎の風景が妙に懐かしかった。

私は此処を出ていくんだ。実感なんてわかなかった。
あれから早2年。一人暮らしにももう慣れた。引っ越した当初は毎日泣いていたのに。親の有り難みが身に染みて分かった。

最初は寂しくて、寂しくて、故郷を出なければ良かったなんて思った事もあった。でも色々な事が分かるようになって一人暮らしをして本当に良かったと思っている。

私には今好きな人がいる。まだ思いを伝えてすらいないのだけれども。

彼はあと1年で大学を卒業する。彼の故郷は私の故郷とも、神奈川とも、違う。就職で故郷に帰るのか、神奈川に残るのか、知らない。

もし。もし故郷に帰ってしまったら。私と彼を繋ぐものは何一つ無くなってしまう。そうしたら、彼の記憶の中から私なんて完全に消されてしまうのではないだろうか。そう考えると本当に怖くなる。

でも。もし。もし彼について来い、って言われたら、私はついて行くのでしょうか。

私は絶対に故郷に帰ると思っていた。都会の、ろくに星も見えない所で一生を過ごすなんて考えられなかった。私が住むべき所は一つだけ。たった一つ。私の故郷だけ。

じゃあ。じゃあ彼がいない生活なんて有り得るのか。有り得ない。そんな事は分かっている。

そうしたら。そうしたら私は何処にいれば満ち足りるの?自分の事なのに。もう子供じゃないのに。自分の事が分からない。

こんな私に幸せなんて訪れるのでしょうか。

i-mobile
i-mobile

投票

良い投票 悪い投票

感想投稿



感想


「 由美子 」さんの小説

もっと見る

恋愛の新着小説

もっと見る

[PR]


▲ページトップ