タカと私は《恋人達の泉》のシンボルである大きなもみの木の下に座って手を握っていた。
私はその時になってやっと先輩のことを思い出した。
「私、先輩に言わなきゃ」
「何を?」
「この前、先輩から告白されたの」
「………」
タカは少し怒ってしまったのか、何も返さない。
「ごめっ…気悪くし……!!」
ス……ッ
いきなり私の唇に何かが触れた。
それはまぎれもなくタカの唇だった。
「これで先輩にファーストキス奪われないですむな」
「…バカ」
「え…駄目だった…?」
タカは少し焦って私の顔を覗いた。
「…メッチャうれしぃ…!」
そう私が言いながらまた、唇を重ね合わせ、先輩のもとへ走り出した。
ドンッ!
先輩を探している途中、何かにぶつかって転んでしまった。前をむくと…。
先輩だ。
「先輩っ…あの…話が!」
そこは誰もいない教室……。
ガタッ!
先輩が私に近づいて来る。
やだ…恐い…!
ついに私は追いつめられてしまった。
「……」
先輩は黙って私に顔を近づけてきた。
「…ぃゃ…」
私は思わず言ってしまった。
「…お前…アイツとキスしたろ…」
「えっ…!」
先輩はタカとのキスをしっていた。
先輩の顔はますます近くなって、今にもキスされそうだ。
「今、ここでお前を襲ってもいいんだぞ?」
先輩の一言で私は涙が溢れた。
「…いゃ…いや!タカ!」
目を開けたとき…。先輩は私の前に倒れていた。
「危なかったね…」聞き覚えのある声…後ろをむくとそこには…去年のクリスマスに別れたはずの彼…。
ドキンッ
私の気持ちだけが、あの楽しかった日々に戻っていた。