―放課後。
僕はまた、社会科教員室でぼんやりとタバコを吸っていた。
思い浮かぶのは、さっきの、僕を真っ直ぐ見つめる瀬崎の顔。
そして、恥ずかしそうに俯いた浅岡の顔。
沢子の事は、もうあまり思い出さなくなって来た。
あの痛みも喪失感も、浅岡の言葉がやわらかく消してくれた。
まだ、隆の事を考えたくはなかったけど…。
浅岡のハンカチを取り出して、ため息をつく。
結局、返せなかったな…。
―コンコン。
ノックの音がした。
…まさか、浅岡だろうか?
「…どうぞ。」
僕は少しドキドキしながら返事をした。