地面から突き出した鉄の壁は【地竜】と呼ばれる魔獣を囲み、その動きを封じた。
「町には指一本触れさせないんだから!」
そう言うと、リオは更なる術を唱えた。
地竜を囲んでいる鉄の壁を黄金色に変えてみせた。
レグナの背から飛び降り、アインは一直線にリオへと駆けた。
「リオ!!」
「アインさ…ん!?」
「このデカブツ一体なんだ?どうして君が!?」
リオはうつむき加減に視線を落とした。
「この魔獣は獄炎の搭からの使者なんです…。」
「獄炎の…!?」
魔獣は咆哮をあげながらリオが作り出した黄金の壁を砕かんとばかりに、己の牙と爪で抵抗していた。
その光景をリオは悲しげな眼差しで見つめる。
「しかし、このデカブツは町を襲うつもりできていた」
アインはリオに問いただした。
「そう…。この魔獣は町を焼き尽くそうとしていたわ」
「教えてくれないか、リオ。獄炎の搭の使者ってなんだ?どうして町を?なんで…君が?」
アインは自分の中で混沌しそうになった。
こんな時、こんな状況で冷静を保っていられない
自分がもどかしい。
マナならば、彼女ならばたやすく判断できるというのに…
「獄炎の搭はここから東の火山地帯にあるわ。そして、この魔獣の元の姿は人間なの…」
「なんだと…」
「人ならざる人…というわけですね…」
背後からマナの声がし、アインとリオは振り返った。
ここまで走ってきたのだろうか、マナは肩で息をしていた。
「マナ!」
「マナお姉ちゃん…」
「必要な搭への情報はすべて手に入れました。急ぎましょう、今から獄炎の搭を落とします!」
マナは休息も無しに情報収集へと足を運んでいたことをアインは悟った。
「休息は必要じゃ…なかったのか?」
アインはマナに微笑んでみせる。
「ま、まって!!」
しかし、そんな二人をリオが制した。
「搭を落とすってことは…その守護者も…討つの?」
リオの肩が小刻みに震えていた。
「そうだ。【搭】なんてものがあるから、苦しむ人々がいるんだ。」
アインは言い放つ。
リオは今にも泣き出しそうな瞳でアインを見上げた。
アインはひるんだが、マナはリオに近づき、小さな肩を抱きしめた。
「大丈夫よ…もう、あなた一人で戦わなくていいの…」