幾度となく見つめようと、その前で体を動かそうと、私が映ることはなかった、、。
既に私は存在していないのか、、しかし、ものに触れ飲食もできる。
こんな退化した脳では結論を導くことも出来ず、深くは考えないことにした。
ただこのまま消えてしまうのもシャクと思い、黄ばんだ便箋に筆をはしらせることにした、、。
『我永きに渡り生を授かり、幾多の困難、、同等の幸。
振り返れば良き想い出として日々過ごす。
死期近しと感じ、今我の存在をここに記す。
昨今、良く浮かぶモノ。
妻に感謝。
息子に陳謝。
少年に些かの不安、、。
我いなくなりソファーの少年を目にするものがいるならば、どうか末永く見守ることを願う。
死後の世でまた息子と逢えるならば、今度は良き父として接っそう。
来世でも妻と夫婦でありたい。
これらを願い、筆を置くこととする、、。
2006 12月 30日 』
、、書き終え回りを見渡す。
クモのいぬ巣をみつけ、死んだ後の我が家と照らし合わせた、、。
そんな気は知る義もなく、少年はソファーで眠りについている。
起こさぬよう毛布をかけ、同じ場にあるアルバムを開くことにした、、。
若かりし日の二人、旅行に出向いたときだったか。
幸せを噛み締める、、。
ページをめくると、産まれたばかりの息子が写っている。
このときが一番可愛かったと、知らず知らず微笑む自分を感じた、、。
更に一枚、、息子の運動会。
かけっこで一等になったときであろう、恥ずかしながらもピースをしている。
ふと、あることに気付く、、。
ソファーをみる。
少年は相変わらず眠る。
写真をみる。
息子が微笑んでいる。
二人同じ顔をしている、、。
血の気が曳くのを感じながらも、少年から目をはなすことが出来ぬ自分がいた、、。