「ティナー、ティナー!」
「はあい」
ふと母に名を呼ばれ、ティナは急いで振りかえった。ガチャリとドアがあき、ミスティーが微笑をたたえながら部屋に入ってきた。
「ティナもお祭り行けばいいのに。また家にいるの?」
「うん……気分、のらないし」
「ここ最近ずっとその調子じゃない。たまには外で羽をのばさなきゃっ。ってことでハイ、お使い♪」
そう言うと、ミスティーは小さな紙袋を手渡した。ティナはうえっとしかめっつらになる。
「これをベティーおばさんのところに持っていってほしいの。私、これから用事があって行けないのよ」
問答無用で、しかも相手に不快感を与えずに仕事を押し付けるというのは、ミスティーの特技ともいえるだろう。ティナは感心半分、嫌気半分ながらにそれを引き受けた。「用事って?」
また仕事だろうとは思ったが、念をおして尋ねてみる。
「隣街のマリアおばあちゃんのとこで農作業を手伝ってくるわ。野菜ももらえるし、いい運動にもなるもの。二、三日は帰ってこれないわ」
「そう」
「じゃ、よろしくね。いってきます」
「いってらっしゃい!」ミスティーが部屋から出ていくと同時にため息がこぼれた。嫌な予感……。