お初にお目にかかる、紅鷹斎です。時代モノ中心でいくのでよろしくお願いします。
朝焼けはいいものだ、とあくびをしながら独り言をいう少年が一人。名前は最上鷹太郎。
秋もそろそろ深くなってくる頃だ。
ススキの生えている小高い丘を駆け降りて家路につく。
家に帰ると一声。
「ただいま、親父。」
すると家の中から中年の、しかし筋肉にまだ衰えのない男が出て来た。
「おうおかえり。今朝の鋼たちはコシってもんがねぇんだよ。」
「朝焼けがでてたよ。」
「そうか、やはりな。もうちょっと炭、必要だな。」
父、最上鷹助である。刀鍛冶をしている。同時にちょっとした兵法者でもあり、ぽつりぽつりと語る。
この場合、「残心の炎」という。斬り合いにおいて、全身全霊を一太刀にかけ、二の太刀を予定しない。しかしあらゆる事態に備え気力がなお余る。それが残心である。
兵法を学びながらの平和な生活は一人の男によって壊された…。