「キャアア〜〜!」女子達の声援がやむことはなかった。だれもかれも俺様に夢中なのさ。 俺の名前は竹田良樹、誰もが憧れるバスケ部のエースだ。俺につりあう女はこの学園にはいないとずっと思っていた。しかし、あの子に出会って俺は変わった。いままでにない気品に満ちたルックス、たんせいな顔立ち、すぐに俺を夢中にさせた。
「…あんな可愛い子うちの学園にいたか?」 「高木恵子。この間転校してきた子さ。どこぞのお嬢様らしいぞ」「お嬢様か!」
翌日、友人が気をきかして彼女を紹介してくれた。 彼女は詩集を読みながら俺を待っていた。胸が焼けるほど熱くなった俺は思わずその場から逃げ出してしまった。「おい!待てよ!」友人の声も届かず肩を落とし歩いていると、やがて一人の女性が現れた。その女性を見て俺は驚いた。 「世の中には似てる人間が3人はいるもんだ」
知り合いの占い師が突然俺の目の前に現れ話をはじめた。どこからか高木さんのそっくりさんを見つけてきたらしい。口説きの練習としてバイト感覚でその女も応じたという。 「早く口説いてみろよ」
女がそう言った。顔は高木さんそっくりだが性格はぜんぜん違った。それでも練習として割りきることにした。「口説いてみろよ」 「サングラスかけていいかい?だって君が眩しすぎるから」
「ギャッハッハッ!ウケる!」
「一緒に青春しない?君はヒロインの資格あるよ」
「ギャッハッハッ!やめて〜苦しい〜」
駄目だ。これじゃ男と話してるのと変わらん。そう思っていたが高木さんを口説くため、毎日のようにこの女と会って話をした。次第にお互いうちとけあい楽しく思えてきた。「詩集とか読まないのか?高木さんは読んでるぞ」「あたしはドラ猫ホームズだね」
詩集とは似ても似つかないバカな本だった。その後、ラーメン屋に行ったり映画を観たりして時間をつぶした。ある日、いつものように公園に行くとその女は俺を待っていた。 「今日はおしゃれしてどうしたんだよ」
よくみると手には詩集が握られていた。高木さん本人だったのだ。それから自然に話しも弾み、俺は高木さんと付き合うことが出来たわけだ。しかし、俺は何故か幸せを感じなかった。
「キザなセリフ言えよ」
「君の瞳にダンクシュート」
「ギャッハッハッ!」
俺には詩集よりドラ猫のがきっと合ってるのかもな。