「いままで言わなかったがな。」
父・鷹助は静かに語り始めた。
「十年前だったか、今はいないがある殿に仕官していた。昨日来たやつはその仲間で相棒だった。お互い鍛え合って仲間内で1、2を争う腕前になったこともあった。」
鷹助の懐かしむ顔が陰る。
「戦で敵将を討ち取った時、手柄はなぜか俺だけにきた。なぜかと聞いたが、相棒との仲が悪くなって嫌がらせをしたかったそうだ。その頃は指南役を二人でしてたんだ。そこで反りが合わなくてのことだ。」
正座をしている鷹助のヒザに乗っている拳が悔しさのためか震えている。
「あのころは俺もまだ若かった。そのせいでこんなことになった。」
「親父。俺、強くなるよ。」
「鷹太郎…。」
「俺、旅に出る。」
翌朝、鷹太郎は父の刀を受けとり旅立った…。