紺碧の塔3

ニワトリ仙人  2007-01-13投稿
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「ただぃまぁ…」
麻美はうつ向いたまま、玄関に立っていた。普段は笑顔の絶えない可愛い顔も、その時は暗い寂しい疲れた顔付きになっていた。
「…兄ィのバカ」
靴をだらしなく脱ぎ、亡霊のように廊下をヒソヒソと進んだ。瞳は熱くなり今にも弾けそうだった。
廊下の突き当たりの部屋は台所だ。台所の机の上にはロウソクの8本立ったケーキが置いてある。麻美は悲しそうにそのケーキを眺めた。
「アラ、帰ったの?コンビニどうだった?」「…兄ィ、どっか行ってたヨ。誕生日なんてしたくないんだ」
台所の襖を隔てた居間から母が姿を現したが、麻美の返事を聞く前に結果は分かっていたようだった。
「そう…御使いご苦労様。多分剛留は麻美のプレゼントでも買いに行ってるんだと思うな」
「兄ィがいないと、誕生日したくないよ!」 途端に麻美の口調が強まった。瞳には涙が溢れんほどたまっていた。
母はその顔を見た瞬間、胸に痛烈な想いが混み上げてくるのを覚えた。同時にギュッと唇を噛み締めた。

「もぅ、えっちだぁっ、たけるぅ♪」
真緒は少し恥じらいながらも、しかしそれでいて喜々と、剛留の上で上下に飛び跳ねる。そのたびに汗が渋きとして弾け、ベットのシーツに滴れ落ちる。「隣近所に響くくらい声だせよ、俺がいけねぇから」
「ィヤ〜ン♪ばかぁ」 若い二人は、快楽に身を委ね、健全な青年としての男女交際からは程遠い行為を遊び感覚で行っていた。
突然真緒の家の電話が鳴った。
「あぁもぅ、本気モードになりかけてたのにィ…ウゼぇ、誰だよ!ちょっと待ってね、剛留」
最初はうっとうしそうに電話に出た真緒だったが、電話の主が分かった途端、安堵の色が浮かんだ。
「剛留…お母さんから…」
しかし不安を隠しきれない真緒とは裏腹に、剛留はただ一言、
「切れ」
とだけ言った。
要件は分かってる。最近帰らないわね、帰ってきたら?
「ちょっと話すだけでいいって、おばちゃん言ってるけど…」
「関係ねぇって、その内帰るって言って、早いところ切ってくれ」 真緒は躊躇いながらも、悲鳴にも似た剛留の母の声を押しきって電話を切った。
「チッ、冷めた。悪いけど、今日はもう寝るぜ」
剛留はそのまま、ベットに横になった。



「…お前はじきに死ぬ…生きたいだろう…でも無理な話よ…………何故ならお前は選ばれし………贄………だからじゃ」



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