ティナは紙袋をテーブルの上に置くと、外出用の服に着替え始めた。選んだのはうす茶のワンピースと七分丈のジーンズ。おろしていた癖の強い髪を上の方でツインテールにむすび、鏡の中の自分にむかって「よしっ」と掛け声をかける。大きく息を吸いこむと、思いきって家を出た。
秋風がそっと頬を撫でる。ティナはぐっと唇を噛み締め、町中へ足を運んだ。
すごい人の数だ。十四歳にしては小柄なティナは人ごみに流され、転びそうになりながらも商店街をつき進んだ。
少し行くと一際にぎやかな八百屋が見えてきた。これがベティーおばさんの家だ。正面から行くと迷惑になると思い、せまい路地を抜けて裏にまわる。
「すいませーん」
真っ暗な裏口にむかって声をかけてみた。返事はない。ティナはもう一度、さっきよりも大きな声で呼び掛けた。
忙しくて出てこれないのかな……そう思った直後、バタバタと忙しく動きまわるピリピリした気配がし、何かが倒れたようなガシャガシャンッという大きな声が聞こえてきた。ティナはびくつきながらも、ベティーおばさんが出てくるのを待った。やがて体格のいい、白髪まじりの藤色をした髪の女性……ベティーおばさんが姿を現した。