青春七眼鏡 02

花敷  2006-01-19投稿
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電車に乗り込み席に着くと友人は思い出したように言った。

「そういえばお前金賞だってね。おめでとう」
彼にしては珍しい。彼は滅多に私を祝いの言葉を吐いたりしない。

「お前が祝いを口にするなんて明日は雪だな。」と言うと彼はおかしそうに笑う。
「なにがそんなにおかしいんだ」と少し不機嫌になる。さっきから私は笑われっぱなしだ。
「窓を見てご覧よ」と笑いながら言う。
私は窓の方に視線を移すと窓の外では塵のような白い雪が空が舞い降りていた。

「わあ…こんなに降っていたのかあ…」と馬鹿みたいに窓を見ていると、彼は少し心配気な顔でうーんと唸っていた。
それに気付いた私は彼に問掛けた
「どうしたんだい?」

「ん?いや…帰れるかなって…」と窓の外の白き世界を眺める。

彼が住んでいる竹津町は私の住まう白川町の隣に位置するのだがその間を通る花久川を横断する橋を通らなければ竹津町に帰れない。
しかし橋は雪が降っていると滑りやすくなるために閉鎖されるのだ。
電車も通っていないためにどうしても一度白川で下車しなければならない。しかし橋は渡れない。彼はそれで悩んでいたのだ。

「あっ。だったら家においでよ。明日は部活も休みだし…泊まっていったらどうだい」と私は提案する。

彼はでもとかしかしとかぶつぶつ言っている。
どうやら迷惑になるのではないかと心配しているようだった。

「期待しないでくれよ。夕食は昨日の筑前煮の残りと隣のおばさんからもらった鯛の煮付けなんだから」と笑い、彼に気にするなと伝えた。

彼は整った笑顔で有難うと言った。

***

「まあまあ。俊一くんいらっしゃい!お久しぶりねえ」と母は友人におばさんくさく挨拶した。まあ実際おばさんなのだが。

「お久しぶりです。おばさん。今日は突然申し訳ございません。」と丁重な挨拶をして母と話していた。

私は居間に入り父に「帰ったか」と言われ、「ただいま帰りました」と言うと、父は「書斎の本棚増やしといたぞ。父さんの力作だ」と誇らしげに言った。

next... 次回12.19の夜に更新予定



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