(やばいっ…見つかる!)
アインはリオの口を塞ぐ手を離し、腰に差してある剣に手を伸ばすが、自分にリオが覆いかぶさっているため届かない。
下手に動いて、物音立てたりしたらそれこそ見つかってしまう。
そんなことを考えてる間にも刻一刻と足音が迫ってきている。
暗い通路に微かな光が差し込むのがリオの頭越しに見えた。
(こうなったら…隅っこに固まるしかない。まだ見つかるわけには…)
『リオ、絶対に声出すな…』
『…え?』
アインはそう囁くと、リオの背中に手を回し、ギュッと抱きしめた。
倒れた場所が幸いにも通路の隅だったので、更に小さく留まれた。
『気のせいか…』
敵兵士が諦めの言葉を吐き、近くまで来ていた足音も遠ざかっていった。
『ふぅ…危なかった…』
緊張の糸が切れ、アインは安堵の息を吐いた。
『ったく、気をつけろって言っただ…ろ?』
暗がりに目も慣れて見えてきたせいか、全ての感覚が蘇るようにアインは”状況”に気付いた。
彼女の顔がすぐ近くにあることを。そして自分はリオを抱きしめ、寝転んでいる。
『あ…いやっ…仕方がなかったんだ』
アインは必死で言葉を探し、その腕を離した。
『…ごめんなさい。あたしのせいで。』
『あぁ、もういいって…それより早くどいて…リオ!?』
『ありがと…見つからないようにしてくれて』
リオはアインに顔を近づけると、その唇にそっと自分の唇を重ねた。
時が止まり。
静けさだけが流れた。
引き離し、立ち上がる
『…行こう』
差し伸べるリオの手を受け取り、アインは立ち上がった。
(リオは死なせない…おれが守る。)
通路の先は搭の最深部、鍵の保管部屋。同時にそれを守る守護者が待ち構えていた。