ナイト・オン・ドラグーン【48】話『獄炎の塔。』

Milk  2007-01-17投稿
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張り詰めた空気がアインをそして、
獄炎の守護者、スウェンを包んだ。
互いの武器を手で確かめ、相手の出方を伺うように二人の動きが止まる。
『ふんっ!』
スウェンは自分の炎の槍を突き出す。

『こんなものっ!!』
アインはとっさに刃ではない柄らしきところを掴んだ。が、
『あっつ!?』
当然ながらも炎を掴んでしまった。
手の平が焼けてヒリヒリする。
『いやっだから…炎の槍だって言っただろ?』
スウェンは笑いながら肩を竦める。
『う、うるさいっ!』
剣を振り上げる。
リオが泣く姿なんて見たくなかった。
ただ、こんなにもたやすくリオを悲しませるスウェンが許せなかった。

スウェンが踏み込んでくる。
燃え盛る槍を剣で受け止める。
重い。
そして近付くほど焼けるように熱い。
今までに戦ったどの相手よりも強い力を感じる。
弾き飛ばそうとしても、押し戻すのがやっとだ。剣と槍が幾度もぶつかり、火花が散り、甲高い音をたてる。

(まるで隙がない!)
アインの中で焦りが生じる。リーチからだろう、アインの防線範囲を軽々と突破してくる。
近付くことさえ困難を極めた。
『兄さんっ!やめてぇ!』
後方でリオが叫んだ。涙を流しながら。

スウェンの動きが一瞬止まった。
無影に突き出される槍の猛攻が止まる。
それを見逃すアインではなかった。
右寄りから、スウェンにとっての左側から突っ込んだ。斜めに剣を振り上げた。
剣を握る手に鈍い衝撃を感じた。
剣ではないものを捉えた感触。
確かに手応えがあった。崩れ落ちるようにスウェンは膝をついた。
『兄さんっ…』リオの悲痛な叫びが聞こえた
(やったか?)
肩で息をしながらアインはスウェンを見下ろした。
と、スウェンが不意に顔を上げた。
『思いあがるなよ!アイン君!!』
鋭い光を帯びた目がアインを射抜く。
炎熱の槍が迫ってくる。

避けきれない。
(ダメだ。殺される……!)
身を固くした瞬間、リオが両手を広げてアインの前に立ちはだかった。

スウェンの槍がリオを貫く。

『リオ!?』
アインはただ立ちすくんだ。『なっ…!?』
スウェンの顔にもまた驚愕と戸惑いが浮かんでいた。
槍が抜かれる。
リオの口元から血が蔦っていた。
『…もういいでし…ょ?兄さ…ん』



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