あいつのコト、忘れたくない。忘れてほしくない。
あの冬は一生で一度しかないから…
高校三年の冬、私はある部活動に所属ていた。
怪我をしていたため選手としては出場出来なかったが、気持ちを切り替えてマネージャーとして同行させてもらっていた。
彼はインターハイでも優勝候補に挙げられる有名選手。
もちろん、私も名前は常に耳に入っていた。
その反面、私は選手としても中途半端で、全くの無名選手だった。
私が彼に興味を持ったのは、同じ部の友達が彼のファンだった事がきっかけだった。
全く興味のない相手でも、毎日友達が騒いでいれば嫌でも見てしまう。
冬のスポーツだったため、1月頃からは長期の遠征が続き、他校と練習場がかぶる事も毎日のこと。
友達と毎日彼を目で追うようになった中で、私は彼の男としての魅力よりも、部活動にひたむきな姿勢に気付いた。
部活動以外では明るく、みんなを笑わせる彼は、部活動になると近付く事も出来ないような集中力を漂わせていた。