航宙機動部隊39

まっかつ  2007-01-21投稿
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六00年に渡る大航宙植民時代ー国家主権同士の総力戦が途絶えて、久しい未曾有の宙際平和が続く繁栄の時代ー実際戦術面の進歩等無かった、と言うより、その必要が無かった訳だ。
今自分の前に展がる大艦隊は、確かに火力も装甲も電磁膜系も申し分ない充実振りだろう。
だが、これは言わば警備隊の類であって、正規の機動部隊ではない。
光速反航戦《CC・オペレーション》…ギャラクシーウォーズ末期に採用された、最も恐るべき戦術、光速にまで到達した母艦が敵に向けて航宙艇を放ち、短時間で、百億km以上を踏破し、滑宙弾や噴進魚雷を艦列にぶち込むーこれが航宙機動部隊の本当の姿だ。
この威力と較べれば、戦艦の主兵装たる亜光速実弾《SLSB》ですら、色あせる。
有効射程距離からして、こちらはせいぜい五0光秒(約一七五0万km)だ。
それですら、防御膜システムで、緩和する事が出来る。
対して、一隻当たり最低七0機以上の航宙艇隊を擁する正規宙母が数隻あれば、理論上は一万の艦船を圧倒し、半径数千光秒を完璧にカバーしてしまう、とんでもない戦力となるのだ。
地球時代海戦史を根本から変えたとされる空母機動部隊の出現・艦載機の大量運用と、それは実に酷似していた。
現在それを保有している勢力はこの銀河でたった二つしかない。
一つは、星間軌道公社《URPC》下にある公社軍。
残る一つがリク達の祖国、共和国宙邦《グルン》。
この二つの軍事集団を除けば、確かにオモチャの兵隊なのだ。殺傷力自体違う。
統合宇宙軍《UUF》ですら、それは例外ではない。
実際莫大な資本が要り、しかもそれだけで配備出来る程単純な話ではなかった。
言わば死生観・命に対する思想、重みにまで踏み込まなければならない葛藤が存在するのだ。
光と同じ速度で、敵に突っ込むのだ。宇宙塵一つまともにぶつかれば、あっけなく爆散と言う事すら有り得る。
そう、正しく賭けなのだ。
戦史上では圧倒的な勝利か、全滅と言う位、実に極端な戦いになっている。
しかも、仮に攻撃隊が無事であっても、肝心の母艦が撃沈されて、期間出来ず、生き残った敵の餌食になると言う悲劇もしばしばだ。
そう、死を恐れぬ要員の大量供給ー否、寧ろそれを名誉とすら思う、例え他者から奇怪に映じてもー教育からしてそう言った体制を必要とする代物だったのだ。



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