「……おい、これはどういうことだ?」
宿の一室、入り口に立ち中で荷物を整理するフロンに向かって尋ねる。
「だって仕方ないじゃないですか。お金がないんですもの」
こちらに目もくれず答えるフロン。
「はぁ……まさか初めて女と同じ部屋で寝るのがこんな情けない理由だなんて……」
うなだれる俺。それを見ていたフロン。こちらを見て含み笑い。
「へぇ?一馬さんって結構そっちの経験薄?」
むかっ。なんかその言い方がむかつく。
「なんだよ。お前みたいな中途半端にロリっ子系よりはましじゃい」
俺はそっと胸の奥にしまってあった台詞を引っ張りだす。
「むきぃっ!!私だって好きでこんな風に育ったわけじゃありません!」
頬を膨らまし、手をばたばたさせて怒りを表現するフロン。
可愛い……。
「は!?い、いかんいかん……」
不覚にも奇妙なシチュエーションで奇妙な女の奇妙な動きに魅了されるところであった。危ない危ない。
「もう!早く荷物整理して寝ましょう。明日は早いんですから!」
ご機嫌斜めの様子で服に手を掛けるフロン。
そして上着を脱ぎ、その下にも手を掛けようとしたところで俺と目が合う。
「……」
沈黙。
そして、
「きゃーーー!!」
凄い勢いで物を投げ付けてくるフロン。
「ちょっ!今のは気付いていないお前が悪ぼかちょっ!!」
なぜか顔に百科事典がぶつかった時点で俺の意識は途絶えたのだった。