どうしよう……返すべきかどうか迷っていたその時だった。
「あ〜、ティナだぁ」
ねちっこい鼻にかかった声。クラスメイトのメアリーだ。いつもティナをいじめる奴らの中心にいる、タチの悪い女だ。よりによって仲間のラベンダー、リックまで連れている。
「なんだよぉ、いっつも外になんか出ないクセにさぁ〜」
「あ、わかった!収穫祭だからか?」
「へー、アンタにも季節感みたいなのあったんだぁ」
ティナはとっさに手の中の紙幣をポケットに無造作につっこんだ。すると、さすが悪巧みを考えている奴らだ。めざとくポケットの事を質問しはじめた。
「ねぇ、今の何?」
「まさか、お前に不似合いなお金……か?」
三人は、じりじりとティナに近づいてくる。
だめだ、逃げなきゃ……!!
ティナはバッとその場から駆けだした。細い路地をくねくねと曲がり、駅の近くの小さな空き地に逃げこんだ。
息切れがひどく、心臓がバクバクと激しく脈うっている。キリキリと痛む脇腹を押さえながら、ティナは地面に座りこんでしまった。