私―レイコは春から公立高校で英語教師をしている。
半年経った今、仕事にも生徒にもだいぶ慣れた………というか、
「レイちゃん!俺英語一個覚えた〜♪」
「レイちゃんじゃなくて先生でしょ。で、なぁに?」
「あぃらぶゅー。」
「……バカ……。」
なめられてる。
騒がしい教室の中、一人の男子生徒がふざけると必ず周りものってくるもので…
「あっ、俺も知ってる!あぃらぶゅー♪」
「俺も俺も!」
「じゃあ俺はあいにーじゅー♪」
騒ぐ男子と笑う女子の声が混ざり合う中、
「じゃあ、俺は〜。」
教室の一番後ろの席から、一人の生徒が声を上げた。
みんなの注目も気にせず、イタズラっぽく瞳を細めて一言。
「あぃうぉんちゅー。」
どこか色っぽい端正な顔立ちから発せられたかすれた声。
男子女子問わずクラス全体が沸いた。
「エロ〜!」
「シン君かっこいい!!」
「言うね〜!」
歓声に笑顔で応える彼が、こっそり私にウィンクする。
慌てて持っていた教科書で顔を隠したけど…きっと私真っ赤だぁ……。
「……ほんとバカ……。」
私の呟きはクラスの騒音にかき消された。