航宙機動部隊40

まっかつ  2007-01-26投稿
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「つまらん。実につまらん」
それから四0分後ーリクはラウンジバーのカウンターでとぐろを巻いていた。
「やる事はお偉方の相手とご機嫌とり、週一回の定期レポート。良い加減怒るぞ?こんな二十歳足らずのか弱い少年に、押し付けるには余りにも退屈過ぎる内容ばかり。これはーそう、国家権力による新手の虐待だ」
褐色に漆塗りされたカウンターに空になったグラスを乱暴に置いて、リクはストレートウイスキーの三杯目を求めてーあかぬけとは無縁なマスターの出したNGに両目を吊り上げた。
「酒位飲ませろや。それで暮らしてるんだろうが」
「今日はもう止めときな。ノンアルコールなら出してやるよ」
「あ!?」
少年はきっとなって、自分の真後ろの方向を指差した。
「あそこでらんちき騒ぎしてるのは、てめえの客じゃねえのか?どう見ても俺と同年輩じゃねえか。奴らには何でも出す癖に、随分なえこひいきだな」
(良く見てやがんな)
マスターは吹き出すのを堪えながら、両肘をカウンターに載せて少年に顔を寄せ、
「良いかぼうず?忠告ってのは救いがいのある奴にしかしないもんなんだよ」
リクが指差した先では、丸テーブル二つを占拠して、子弟・子女達十数名が、確かにらんちき騒ぎに耽っている。
来ている衣装からしてかなり裕福な階層に属しているのだろう。そして全員が、ティーエンジャー向け3Dホロ配信マガジンから切り取られたみたいな美男美女っ振り。
ファッションもメイクも最高水準のブランドでがちがちに固め、洗練の極を誇っている。
「奴等を知ってるだろ?星間諸侯太子党ー銀河中の嫌われ者《アグリープリンス・プリンセシズ》醜い王子王女様方だよ」
そう言ってマスターは彼等に向けて顎をしゃくった。
勿論リクにもその程度の予備知識はある。
「それが俺に酒の替わりにソーセージを勧める根拠かよ」
「蛇の道は蛇ー玄人の言う事にはな」
マスターの太い腕がテンポ良く翻りー
「素直に従うもんだ」景気良い音を立てて少年の目の前にソーセージならぬ慎重に切り分けられたチキンの照り焼きが盛られた皿と、ホットウーロンティーが湯気を立てる陶製コップが載せられた。
短い付き合いで、見事好物を知り尽す相手に少年は大人しくフォークを手にして、降伏の意識表示をするしかなかった。
しかしその瞬間、事件が起きた。



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