手が震えてくる。体が急激に冷えていく。なんだろ……なんか変。
ぼやける視界に映る二人はすごくお似合いで。
「あぁ……なんだ。そっかぁ……。」
全部理解できた。
これは浮気現場じゃなくて、
赤木さんは浮気相手じゃなくて、
私が、遊びだったんだ。
早く気づくべきだった。
嫉妬や束縛をしないこと
ワガママを言わないこと
私を求めないこと
気づく要素はたくさんあったのに
舞い上がって踊らされて……
“禁断の恋”という名の遊び。
私だけがハマってたみたい。
ほんとなにしてんだか。
「アネキ?」
精算を終えたタカシが店から出てきた。
振り返った瞬間、ぐらりと視界が揺れる。
「おぃ。」
慌てて支えるタカシにすがりつきながら、私は声をしぼりだした。
「早く……お願い……。」
まったく言葉にならなかったけど、さすが姉弟。
タカシは私を抱きかかえるようにして、その場から歩き出した。
だんだん遠ざかる騒ぎ声。
遊びの時間は、終わりね。
タクシーに乗った瞬間に薄れていく意識。
それでもまだシンの顔が、声が、指先の感触が蘇る。