『27歳、夜の世界を知った日(一部の)』
「いらっしゃぁ〜い。」
生暖かいトーンのあいさつが聞こえる。鏡が異常に多くてテレビでしか見たことがなかったこの場所は…
「あらぁ。真樹じゃないのぉ〜。」
ピンクのドレスに身を包んだホステスと言っていいのか、オッサンと言っていいのか。私が連れて来られたここはオカマバーである。「今日は女がいる〜。ちっさいわね。」
私を珍しい目で見ながら真樹くんとピンクのドレス男は親しげに話している。
私たちは広いソファーの席に案内され、私はど真ん中に座る事になった。私の隣にはピンクのドレスのオッサンと反対側には黒いスーツの挑戦的な目の綺麗な男が座った。こんなに綺麗な男を私は見たことがない。
「あまり見ないタイプだね。」
綺麗な男が後からソファーに腰かけた真樹くんに話しかけた。
「みやちゃん。何か飲みなよ。」
真樹くんは綺麗な男の言葉が聞こえなかったのか、返事をせずに私に酒をすすめた。
「ウイスキーとワインどっちが好き?」
「ワインの方が好きです。」
綺麗な男にたずねられ、私は答えた。
「夏樹。みやちゃんに夜の世界をおしえてあげて。」
真樹くんはニヤリと笑みを浮かべながら綺麗な男に言った。私は初めてのオカマバーに緊張し、焦りはじめる。そんな私を無視して綺麗な男はワインを持って来て、真樹くんはグラスにそれを注いでいる。
「みやちゃん、よろしく。真樹のいとこ夏樹です。」
驚く私をよそに、みんなでグラスを持って乾杯をすることにした。
“みやちゃんの初のオカマバー体験を祝して”
戸惑いながらも楽しむ自分がそこにいた。