『27歳、最悪の朝』
うぅっ…頭が重たい…。目が…開かない…。動きたいのに動けない。かなしばりとは違う感覚。そうだこれ…二日酔いってやつだ。
私はゆっくりと目を開けてみた。見たことのない天井。驚いて起き上がろうにも、体が動かない。首だけ動かして横を見ると、向かいのソファーで真樹くんが眠っている。
「目ぇ覚めた?」
ニヤニヤしながら私の顔を覗き込んだのは、すっぴんになって普通の男の人に変身した夏樹だった。
「うわっ…!イタタ…。」
驚いて勢いよく体を起こしたために、頭が響いた。
「シャワー使いなよ。クレンジングとか全部揃ってるから。」
夏樹はタオルを枕元に起き、キッチンへ移動した。
私はシャワーを借りてさっぱりさせ、髪を乾かした。ダイニングからはコーヒーのいい香りがする。
「真樹!そろそろ起きろよ!」
夏樹は真樹くんを揺さぶるが、真樹くんは全く動かない。
「こいつ一度寝たらなかなか起きないんだよ。」
夏樹は笑いながら私にコーヒーを渡してくれた。
「あの…私、記憶が…。」
おどおどする私に対し、夏樹は何も気にしないという感じで
「大丈夫だよ。俺たちが飲ませ過ぎて、店で君は寝ちゃったんだよ。ごめんな。調子に乗って。」
夏樹は苦笑いしながら優しく私に手を合わせ、ペコリと頭を下げた。
「真樹がおぶってきたんだよ。起きたら一応、お礼言ってな。」
夏樹の言葉に私は声も出ず、ガンガンする頭と恥ずかしさでうつむいた。
27にもなって何をやっているんだか…。カーテンの隙間から光が見える。時計は9時をさしていた。