不貞腐れたような、照れ隠しと思われる表情のさとちゃん。
「にぃは絶対さとちゃんの味方だっていつも言うの。だから、私もにぃの味方じゃなきゃいけないの」
…自主的同意ではなく、強制同意ですか?
「だから…ホントはすごくすっごく嫌だけど、にぃがケッコンしてどっか行っちゃっても、私はにぃの味方だから、にぃを困らせちゃダメないの」
なんて健気なんだ。お姉さん、思わず目頭が熱くなっちゃいます。
そうか。
さとちゃんにとって、お兄さんの結婚は反対したいけど反対できない、ジレンマなんだね。
「ねぇ、さとちゃん」
「なに」
味もそっけもない返事。お兄さんに対してはあんなに殊勝なのに、この態度の差はどーよ?
「結婚したって、お兄さんがさとちゃんのお兄さんじゃなくなったりはしないんだよ?」
途端にキョトンとするさとちゃん。やっぱり。
「結婚したからって、一生会えなくなるわけじゃないし、それどころか、自由に新婚家庭に出入りしていいんだよ」
人はそれを『嫌がらせ』と呼ぶ。
まぁ、あんただけ幸せになるのは許さないよ、という姉に対する愛情表現だ。
「だってお兄さんはさとちゃんの、世界で一人のお兄さんじゃない?」