…何が起こっているんだろう。
いつもと違う様子の先生が心配で、私はあの部屋へ行った。
先生が来るのを待つために。
先生の匂いがする。
微かなタバコの匂いとせっけんの香り。
私は今、先生の腕の中にいる。
「先…生…?」
抱き締めてくる腕の力は強くて、温かかった。
先生が小さく震えてる気がして、もう一度呼んでみる。
「先生。」
すると、先生は、はっとしたように腕の力を抜いた。
「…すまない。」
と私の方を見ずに言った。
どうして謝るの?
なんで、私の方を見ないの?
その事に傷ついたけど、それ以上に先生が傷ついているように見えて、 気がついたら、先生の髪を撫でていた。
先生を見上げる。
先生は驚いた顔をして、やっと私の方を見た。
「浅岡。」
私を呼ぶその声は、どこか苦しそうで今にも泣き出しそうだった。