…シエラが目を醒ますと、そこはなぜか天蓋つきのベッドの上で、シエラは驚いて勢いよく体を起こした。すると、全裸だった筈の体に、美しい純白のドレスが着せられている。シエラは夢かと思い、思いきり自分の頬をつねった。しかし確かな痛みを感じ、涙目になりながら頬をさすった。
「ここは一体どこ…?死後の世界…?でも痛みは確かに感じたわ…──。」
シエラは独り言を呟きながら、ベッドから身を乗り出して辺りを見回してみた。
するとそこが、広く豪華な部屋の中であることが解った。部屋の天井の中央には、眩いほどの輝きを放つシャンデリアがあり、床には見るからにフカフカな真紅の絨毯が敷かれている。カーテンには金と銀の糸で刺繍がされ、家具類も全て緻密な細工の施された高価な物であることが判る。
シエラは思い切ってベッドから降り立つと、カーテンに遮られた窓に近付こうとした。ここが一体どこなのか、少しでも手掛りが欲しかったのだ。
そしてシエラがカーテンに手をかけようとしたその瞬間、シエラの背後に何かが近付く気配があり、シエラは思わず身を硬くし、動きを停めてしまった。
すると棺の中で聞いた、あの低く澄んだ声が部屋に響いた。「…目醒めたようだな、シエラ。ようこそ、我が城へ…。」
シエラは急いで振り返った。するとそこには、黒髪碧眼の美しい男性が立っていた。歳は20歳くらい、身長はシエラ(165?)よりも頭一つ分高く、全身を黒い服で包み込んでいる。シエラは瞠目し、男から一歩後退ろうとした。しかし、男は手を伸ばしてシエラの腕をガッシリ掴むと、逆にシエラを自分の胸に引き寄せてしまった。
そして、驚きのあまり絶句してしまっているシエラを、自分の腕の中に抱き寄せたまま、男は簡単な自己紹介をした。
「我が名はエルフィン。この城の主だ。そしてシエラ、貴女の夫となる者だ…──。」