見慣れた扉を開いた瞬間、鼻をついたのは泣きたくなる香り。
甘いけど男を感じさせるソレは
――シンの香り――
「遅いし。」
机に足を乗せ、腰掛けているシン。
「なに…してるの……?」
「待ってたんだよ。」
「なんで……。」
「それ、マジで言ってんの?」
目を細め下唇を突き出すのは怒ってる時。
やっぱり高校生だな〜わかりやすくて。
っていうか、なんでそっちが怒ってるのよ。
「………。」
黙って下を向いた私。
少ししてから、シンが軽く笑いながら言った。
「今日可愛かったな。ちょっと彼氏について突っ込まれただけで真っ赤になっちゃって。」
息をのむ私に構わず、更に続ける。
「彼氏どんなやつなの?何歳??」
なにそれ――なんでそんな普通なの?
言葉が出なくて唇を噛み締めていると、シンが深いため息をついた。
こめかみに指を当て、まっすぐに私を見つめて――
「っつーか意味わかんねぇ。お前の彼氏は俺じゃないんだ?」
それはこっちのセリフよ…
「昨日の夜どこでなにしたわけ?彼氏と。」
突き刺すように刺々しい言葉。昨日の夜のことは触れたくなかったのに――。