僕の名前はイモン…本名、イモン・メルセデス。簡単に僕の紹介をすると、フェラーリに乗っているホームレスなジャガイモだ。今の時代、ジャガイモだってフェラーリに乗れる時代だ。人類の進歩の偉大さをつくづく感じさせられる。
そんなこんなで物語は始まる…
東京、ハラジュクのあの公園に僕は住んでいる。
ゴーゴー…台風12号、今年最大の台風らしい。まさに今直撃を受けている。
新築のマイホームが激しく揺れ動く。
大丈夫だろうか…と少し不安なイモン。
僕の家はダンボール。父も母もいない。というよりとっくの昔にそんなもの忘れた。
唯一の友達は、愛車のエンツォ・フェラーリ。コイツだけだ…僕を理解してくれるヤツは。そんな事を考えながらイモンはゆっくりと夢の中へ引きずり込まれていった…。
次の日の朝、起きてダンボールの扉を開けると、元気な日光が目にしみた。かすかな視界を頼りに辺りを見渡すと…あれ!?、…フェラーリが無くなっていた。まさか…昨日の台風で…というより、ここは…。
イモンは冷静にもう一度周りを見て見る。青い空、青い海、そしてシーサーが見える。…沖縄。
どうやらイモンもフェラーリも台風で飛ばされたらしい。
『まったく…最近のフェラーリは紙のように軽いからなー』とつぶやく。
そんな時だった!なんとイモンは目の前にサトウキビ畑を発見した。
初々しいサトウキビを一つ頂戴する。
実に清々しい気分だ。でも少し苦いのでペッと道に吐き捨てる。甘くないサトウキビはサトウキビでは無いのだ!と自分に言い聞かせた。
ちょうど西へ四百メートル進んだ時だった…
「ヴィーン!ヴィーーン!!」
…!!こっ、この重低音はっ、まさか??
「キキッー!!」
目の前で真緑のジャガーが止まった。
ふむ、確かに沖縄といえばジャガーだ。ジャガーでしかない。ジャガー以外の何者でもないのだ。
目の前にジャガーがある!!ただそれだけで世界が明るくなった気がした。
フェラーリはもういらないと踏ん切りをつけた自分がそこにはいた。そんな自分にピリオドをうった…。うつしかなかった…。イモンは人生の階段を一段一段確実に上がっていた。
いきなりジャガーの窓が開いた!!ウィーンと窓が下がりきる前に、中から男の声が聞こえてきた。
『ピリオドの向こう…それを見てみたくはないかい?』
これがマルコとの出会いだった。