お試し小説です。
黒の章--*--*--*--*--*-
何も見えない…
ここは何処なんだろう?
暗くて何も見えない
…暗い?。
いや違う。
暗いんじゃない、黒いんだ。
上下左右、東西南北、回りが黒一色で埋め尽くされている。
その為に、暗いと感じてしまうのだ。
下も上も黒いから、足場が確認出来ないので、何か分からない物に、何度かぶつかってしまう。
自分が今何処に立っているのかも分からない、ここは何処?…。
何かが沢山、足下にあるのは分かる、でも何か確認出来ない…。
電気か何か無いのかしら?…
何か手に触れた。
これなんだろう?。
何かのレバーの様だった、レバーなら引けば分かるだろう。
好奇心で引っ張って見ると、回りが急に白に染まって行った。
いや、白くなったと言う訳ではないようだ。
壁に天井に床が白い素材の物で、作られているだけで、私の視界には白の他に赤も確かにあった…。
これは何?
白に紛れて、床に広がる鮮明な赤。
それは私が先ほどからぶつかっていた物からでていた。
床に散らばっていたのは、大量の死体…
バラバラの死体だった…。
ひぃっ……
白い床に広がっている赤は、死体から出ている血だ。
黒い闇から脱出した私の目の前には、憮然と広がる残劇の跡…。
何があったのかは分からなかったが、“何かあった”のだけは、現状からして認識出来た。
なんなの?
この死体の山は…?
さっきまでは何も臭わなかったのに…、急に悪臭が漂い始め、私の鼻に痛いくらい、嫌な臭いがつく。
ともかく、ここからでなきゃ…
私は咄嗟に走り出した。
無我夢中になって、走り続けた。
心の中で助けてと何度も唱えながら…。
そうして走り疲れて来た頃、急に目の前に扉が見えて来た。
あれ?
さっきはこんな扉
なかったのに…
なんで?
確かにさっきまで無かったその扉、でも私は迷わずドアノブを回した。
ともかくここからでなきゃっ!
カチャ…
あっさりと扉は開いた。
そして眩い光と共に私の視界に飛び込んで来たのは、鋭い何か…、尖った刃の様な物だった。
!!!!。
黒いローブ、頭蓋骨、大きな釜…。
私を見て笑った気がした…。