「ええっ!二百万、銀行に振込んだ?!」
頷く相手の正気を疑うのはこんな時だ。おいおい、勘弁してくれよ。
「それ、ホントに娘さんだった?ちゃんと本人だって確認した?」
「だって」
八十を越した老人が使っても可愛くない。
「あれは清香の声だったんだよ。警察の人も横にいたし」
「だ〜から、それが怪しいって…ああもう、それ、オレオレ詐欺だって言ってんの!」
「清香はオレオレ、なんて言わないよ」
「…俺の言い方が悪かった。振込め詐欺だ」
「テレビで注意してるやつかい?」
「そう!それ。ほら、早く警察に」
「でも、あれに出てくるのは男だよ。女の子の例は見たことない」
このジジイに応用機能はついてないのか。屁理屈こねやがって。
広い縁側で、じぃちゃんは更に言う。
「まぁいいさ。清香じゃなくても、二百万で困っている人を救えたんだ。安いもんだ」
ああ、脱力…。
そりゃ、大金持ちのあんたにはなんでもない金かもしんないけどさ。
「なぁじぃちゃん。近所且つ、晩飯差し入れよしみでちょっと言わせてもらうけど」
「何だい」
「あんたは人が善すぎる!」
眉間に皺を寄せた俺とは反対に、じぃちゃんはにこにこ笑っていた。