5時47分の奇跡

さとも  2007-02-04投稿
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「はぁー…」 太郎の口から思わずため息がこぼれた。
なんで俺、落ちたんだろ。
滑り止めのハズだったのに…

落ちるのは4度目だ、家には帰りたくない。と言っても他に帰る所はない。大好きな兄ちゃんは北海道にいっちまったし…でも家に帰れば母さんが…「はぁー…」、だから帰り道なんてろくに意識せずに歩いたんだ。ただただなりゆきのままに。このままどっかどっか遠くまで行って、毎朝気の済むまで寝てて、本読んだり、ゲームしたり、サッカーしたり……
そんで受験なんて受けずに俺は立派な大人になるんだ!

ってダメダメ、無理に決まってる。
まず、母さん。
俺が逃げ出したなんて知ったら……うっ、想像したくもない。
次にねぇちゃん。
……うーん…でも、場合によっては優しい声の一つや二つ…いや!もう二度と騙されるものか!そうやって俺は幾度と無く裏切られ、泣かされてきた。
そんな自分の世界に入っていた俺を着歌が現実世界に連れ戻す。
慌てて携帯をポケットから取り出した。
ピッ… 「はぁー…」
「どうだった?6時までには家に着いてること!母より」
「まったく、6時って…今何時だよ」
画面の右上を見た。
5時47分!?
「ヤバいじゃん、俺っ!」
周りを見渡すと運良く家の付近だった。 まあ、毎回受験の帰りはこの道を通ったのだ。無意識で歩いていてもそういう事もあるだろう。と軽く流した。
走ればあと10分。
「よしっ!」っと加速しようとしたその時だった…
「たろちゃん…!?」
透き通るような柔らかい声が僕の名前を呼んだ。
「え…?」
太郎は声のほうに振り返る。
「未貢…なんで、お前が?」

そう…あれは…受験に落ち続けたバカな俺に、神様がくれた5時47分の奇跡だったのかもしれない。

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