帝は、「…帝位を兄上に返譲する?…いいでしょう。ではその代わり…──伊織姫を私にください。」とキッパリ言い放ちました。
「劉嘉…なにを…!?」
それを聞いた宗劉は、絶句してしまいました。姫も「今上様!そのようなこと…お戯れが過ぎますわ!」と思わず叫んでしまった程です。
しかし劉嘉は、開き直ったかのように飃々とした態度で、「当然でしょう?私は兄上に帝位を差し上げる。では兄上は私に何を下さるか?…答えは一つ。伊織姫です。なぜなら私が今一番欲しいのは伊織姫…貴女だけなのですから。それに…兄上は月乃を娶ればよいではありませんか。フフ…月乃も兄上にご執心のようですし。」と言いました。
すると、それまで静かに控えていた月乃がスッと立ち上がり、滑るように帝に近付くと、帝の頬を平手で打ったではありませんか。そして頬を押さえながら茫然としている帝にむかって、こう言い放ちました。
「…だから貴方では駄目なのですよ、陛下。」