シエラ 4

和華  2007-02-05投稿
閲覧数[284] 良い投票[0] 悪い投票[0]

「我が名はエルフィン。この城の主だ。そしてシエラ、貴女の夫となる者だ…──。」
このセリフを聞いたシエラは、目が点になった。ただでさえ理解不能な事態だというのに、いきなり『夫』とはどういうことなのか。
シエラは混乱している頭を何とか整理しようと、「はっ…離して下さいッ!貴方は一体何者なのですか!?」と叫んで男の腕から逃れようともがいた。
しかしエルフィンの腕はビクともせず、逆にさっきよりきつくシエラを抱き寄せ、落ち着いた声で「…離さない。150年かけてやっと見つけたんだ…。それに言っただろう?私は貴女の夫になる者だ、と。」と言うと、シエラの顔を左手で仰向かせ、そのまま親指でシエラの唇をゆっくりなぞり、その後そっとシエラに口づけた。

シエラはあまりの出来事に茫然としてしまったが、自分にキスをしているエルフィンの唇が、微かに震えていることに気付き、そのまま大人しくキスを受けた。
そして長い口づけの後、エルフィンはシエラを自分の腕の中から解放すると、「…すまない。」と呟き、困ったように口許に手をあてて、目を伏せた。
シエラは、相変わらず何がなんだか分からなかったが、とりあえず現状を少しでも把握するのが先決だとばかりに、エルフィンに質問をした。
「…今のキスのことは後回しにするわ。それより…ここはどこ?どうやって私を棺の中から出したの?それに貴方は誰?そして…──花嫁ってどういうこと?」

すると、エルフィンは口許にあてていた手を下ろし、ゆっくりと顔をシエラの方に向けた。そして青い瞳でシエラを見つめると、静かな響きを含んだ声で答えた。「…じきに判る…が、まぁいい。教えておこう。この城は水中にあり、逃げることは不可能だ。信じられないならカーテンを開けてみるがいい。窓の向こうに美しい魚が泳いでいる筈だ。そして私は…この湖の全てを統べる水神。私の力をもってすれば、棺の蓋を開けるなど容易いこと…。そして貴女は、私に捧げられた花嫁。…150年間待ち望んだ、真の花嫁だ…──。」

シエラは、エルフィンの信じ難い答えを聞いて、ますます頭が混乱した。しかし、考えるより先に体が動き、誘われるかのようにカーテンに近付くと、僅かに震える手でカーテンの端を掴み、勢いよくカーテンを開いたのだった…。

i-mobile
i-mobile

投票

良い投票 悪い投票

感想投稿



感想


「 和華 」さんの小説

もっと見る

ノンジャンルの新着小説

もっと見る

[PR]
関東近辺のお葬式
至急対応も可能!!


▲ページトップ