赤実『何も立って食べなくたっていいだろ』
俺達が、聡の席を確保しなかったから、こいつは拗ねているのだ。
こうと決めたら考えを改めないからなぁ。
まぁ放置が最善だな。
赤実『正直あの転校生には、別の席に移って欲しい』
転校生の周りには人が集まるもんだ。
それは隣りの俺には迷惑でしかない。
聡『でもさぁ、可愛い子じゃん』
聡がうどんの汁を飲みながら言ってきた。
聡『そんな子と席をくっつけられるのは嬉しくないか?』
亜裕実『そ、そうなの?』
亜裕実が、聞こえるか聞こえないかギリギリの声量で問ってきた。
赤実『んなわけないだろ。うるせぇったらないぜ』
騒がしいのは勘弁して欲しい。
聡『とかなんとか言って、女の子の色香に惑わされてんだろ?』
亜裕実『へぇ………そうなの…』
怪訝なまなざしで見つめてきた。
赤実『んなわけないって』
いつになく調子に乗っている聡に、足払いをかけた。
聡『うげ!うどんがこぼれた!』
こけてはいなかったが衝撃で持っていたうどんが少しこぼれた。
赤実『すまんすまん。じゃあこれで拭き取れ』
俺は聡にティッシュを渡した。
聡『ティッシュをうどんの中に入れるな!普通に渡せよ!』
亜裕実『じゃあこっちもあげるよ』
亜裕実は定食のお盆についていた紙ナプキンを聡のうどんめがけて投げた。
聡『紙ナプキンはもっとたち悪いわっ!』
赤実『紙ナプキンもティッシュも使い切りやがって。贅沢な奴め』
聡『…鬼だな…あんたら…』
学食を食べ終えた俺達は、床を拭く聡をいつものように放置し、教室に向かった。