キスの後は何事も無かったかのようにマサは普通に話している。私はさっきのキスの事で頭がいっぱいになっているというのに...。
「どしたん??ボーっとして。足痛い??」
優しく聞いてくる彼に横に頭を振った。するとそのままベッドに押し倒され、またキスをされた。そのまま彼の手が服のボタンをはずそうとした時、なぜか涙が溢れてきた。自分でも何がなんだか分からない。
彼の手は止まり、泣きじゃくる私に動揺している。私は自分でも涙の理由を説明できず泣くだけだった。
「お前、初めてなん??」
不思議そうに聞く彼に私は静かにうなずいた。彼もそうだがカズやシンゴも見かけが派手な私を処女だとは思わなかったらしい。見かけで判断した事に彼は私に何度も謝った。しかしこの事が原因で彼に対する不信感が芽生えた。やりたかったから、会った初日に付き合おうと言ったのか、それともただ軽そうに見えたから遊びで付き合おうと言ったのか、いろんな事が頭を駆け巡った。その後は彼の気遣いも偽りにしか見えず、素直に彼の話を聞く事さえ出来なかった。しかし心のどこかで本当に私を好きになってくれたんだと信じたい部分もあったが、今の私にはどうする事も出来なかった。
帰りの車の中は何も知らないカズ達が騒ぐ中、私は彼の膝の上でただ黙り込んでいた。時間が立つにつれ、カズ達も私と彼の妙な雰囲気に気付いたのか静かになった。家へ着き、マサの母親に挨拶をして家へ入った。その瞬間、こらえていた涙が一気に溢れてきた。悔しいと言うか悲しいと言うか。いてもたってもいられず、そのまま家を飛び出した。そこにはまだマサ達の車が止まっている。私はそのまま見向きもせず、痛みがはしる足を押さえ、泣きながら走った。
「待てって!!」
強く私の腕をつかむマサの姿があった。私はその手を払いのけ、無言で立ち去ろうとしたが彼はまた腕をつかむ。彼の後ろにはカズ達の姿もある。
「離して!!触らんとって!!」
私は泣きながら彼の手をまた払いのけた。