正直、俺は日吉さんが苦手だ。
職業は知らないけど、じぃちゃんの家にたまに来る、エリート然とした、いけすかないヤツ。
「いらっしゃい。二ヵ月ぶりかね」
「はい。こんにちは。宗一君も、久しぶりだね」
家政婦さんに案内された日吉さんはいつも通り、隙ってもんがみあたらない。
「あー、どーも」
「相変わらず、今時の若者は、と言われそうな返事だね」
「今時の若者をひとくくりにする人ほど、頭が固いっすよね。つまらない小物が多いっていうか」
「小人閑居して不善をなす。君がそうでないことを祈るばかりだよ。もっとも、祈りは往々にして、相手に届かない」
ムカッ。
「はいはい、そのへんにしときなさいよ」
じぃちゃんが、穏やかな声で割って入った。
いかん。老人の前で、幼い言い争いをしてしまうところだった。
「ご」
「申し訳ありません。宗一君は頭がいいですから、言葉のやりとりが楽しくて、つい」
あ、この野郎。俺の言葉を遮りやがったな。
しかも何だ、その見え透いたおべっか&微笑みは。
「そうだろう。私も彼には頭が上がらないんだ。今も私が詐欺にあったって叱られててね」
ジジイ、そこは嬉しそうに言うところじゃねぇ!