『27歳、ついにきてしまった』
家へ帰ると母が居間からすぐに出て来た。
「ちょっと都!あんた27にもなって無断外泊とか平気でしないでちょうだいよ。」
昔から母は私のやること為すことにうるさく言う人だった。一方、父は仕事人間で私に興味はなさそうなので、私は大変に気が楽なのだ。
「心配しなくてもいいよ。今日は仕事ないし。」
私は一つため息をついて自分の部屋へ行こうと階段を上がる。
「近所の人の目もあるし、いくら仕事場が家から離れているからって、子どもを預かる仕事っていうのはね…」
「はいはい。」
背後から聞こえる母の言葉を私は打ち消した。
「ちょっと、すぐに降りてきてよ。」
(まだ何かあるのか…。)
私は面倒くさそうに振り返る。
「何か用事?」
「泉が来るのよ。」
泉は私の2つ下の妹で大学の時から家を出ている。
「別に帰って来るだけでしょ?」
「お客様連れて来るの。」
母のその言葉を聞いた時、嫌な予感がした。
「へぇ。」
私は気のない返事をして部屋へ入った。
「今日は夕食作るの手伝ってね。」
階段の下から母の声がする。
(…泉にまた負けた…。)
私は着替えてソファーに体を預けた。夢のような時間から現実に返されたような気持がした。