帆に目一杯風をはらんだヨットのように、青竜の操る水の塊は目まぐるしい速さで異次元を駈け抜ける。
「すっごお〜〜い!まるでCG合成みたい」
「…? 現世(うつしよ)の言葉は分からん。
ま、水辺ならどこへなりとも案内出来るが」
「四神の皆さんって、全員こんな凄い力をお持ちなんですか?」
「ふむ…まあ、そういう事になるか。
ただ、破壊力の強大さは白虎が一頭地を抜いておるやも知れん」
「…ぜんっぜん強そうに見えない」
「奴は首から下が本体だ。君も見たんだろうが?」
「はい。……すっごく恐かったぁ…」
「ふむ、まあ、全員似たようなものだ」
いつの間にか私たちは元の世界に到着していた。
フレディの震えもようやく収まったみたいで安心した。
パチン!と指を鳴らし、水の塊を散らした青竜は“ギュンッ”と体を反転させると本来の姿に戻っていた。
「うそー…」
《愛どの、さらばだ》
声を残し、巨大な竜は夕景に溶け込むように“スーッ”と消えていった。
最後に見えた背の青い鱗が、夕陽をはじいてキラキラと幻想的な輝きを見せていた。