真っ赤な夕陽が、男の影を、長く長く伸ばして居る。
男は35歳。
今、港を出て行く船を眺めながら、悲しい局を、小さく歌を口ずさんで居た。
「今日の連絡船にも乗って来なかったなぁ」
家族と別れ、やっと暮らしも、落ち着き、家族を、本島から呼び寄せたのだったが…
「未だ、たったの一週間じゃないか」
男は、軽く笑いながら家路に着いた。
家に着くと、男は大事な事に気が付いた。
自分の住んで居る、島名を間違えて、家族に郵送で送って居た事を。