その夜は、そのまま森の中で朝を待った。
眠るようにとレグナに言われたが、結局のところ、アインは一睡もできなかった。
『そういえば、あの町で妙な”声”を拾ったぞ』
思い出したようにレグナが言った。
『人の思念ってやつか?』
『うむ、確か”大地の城塞…”と言っておった』
『大地…って次の封印の搭のことか?』
獄炎の鍵を壊した後、次の行き先は”大地の搭”だとマナは言っていた。
錆の町へと向かったのは、大地の守護者についての情報を得るためだった。
『まぁ…だいぶ近くまで来ているがな…』
『え?大地の搭ってここらへんにあるのか?』
唐突なレグナの言葉にアインは驚く。
まさか、とゆう衝動に駆られた。
去っていったマナの行く先を気にかけていたが、近くに大地の搭があるとなると、マナが行った場所は限られている。
『まずい!マナは大地の搭にたった一人で行ったかもしれない!』
『ふっ…よいではないか、あの娘だけで大地の搭の大半の戦力は削られようぞ。』
皮肉気味にレグナが言う。
『馬鹿言ってる場合か!行こう大地の搭に』
アインがレグナに駆け寄ろうと、立ち上がった。
いまさらながら、マナを引き留めなかったことを後悔する。
アインがレグナの背に登った時だった。
『やめておけ、一人で大地の搭に行くのは危険すぎる』
と、どこからか女の声が響く。
『誰だ!?』
アインはすかさず、剣を抜き辺りを見渡す。
『な〜んてっ言ってみたりしてねぇ♪』
どこか拍子抜けた声。
しかし、それは二度と聞くはずのないものだった。
アインの目の前にとぐろを巻いた炎が降ってくる。
炎が飛散し、その人物が表になった。
『うそ…』
アインは目を疑った。
赤い髪に青い瞳の死んだはずのリオが目の前に立っていた。
『リオ…?リオなのか!?』
『リオだよ。ただいまっアインさん』