龍雅はゲンに思い詰めた表情でこう言った。
龍雅「…僕の部下が…裏切りました…」
ゲンの表情は硬かった。
そしてこう返してきた。
ゲン「バルト・ガイラーのことか…」
龍雅は意外な表情をした。
龍雅「どうしてそれを?」
ゲン「さっき敵と通信してただろ?偶然、それを傍受してなぁ…」
龍雅は俯いた。
龍雅「そうですか…」
後ろに下がって聞いていた綾香はこの暗い空気を何とかしようと龍雅に話を持ち掛けた。
綾香「あ…あのさ…さっきここまで来る途中にグルドがゴロゴロ転がってたけどあれ半分位は龍雅がやっつけたんだよね?凄いよねぇ!!」
綾香の一言で場の空気が覆されることはなかった。
「峰崎中佐!残念だがこれが現実だ」
突然テントの入口から男の声が聞こえてきた。
龍雅や辺りにいた一同は その方向に目を向けた。
そこにはロイの姿があった。
龍雅はロイの姿を見ると即座に顔を背けた。
ロイ「貴様の部下は敵に寝返った。そして『ダークフィアー』も…。やつらは我々の予想を遥かに上回る速度で復活に向かっている」
龍雅はダークフィアーが敵の手に渡ったことに対して驚きの表情を隠せなかった。同時にロイの言葉の意味を十分に理解した。
龍雅は椅子から立ち上がりロイに向かって悲しげな表情でこう言った。
龍雅「わかっている!! だがまた以前のように身近な人間が反乱分子になってしまった事に対して今度はどう動けばいいのか……」
龍雅が不安そうな口調でロイに投げかけるとロイは鼻で笑って返した。
ロイ「そんなこと、貴様にはとうの昔に知っているはずだ。以前みたいに『例え、身内でも不満分子は粛清する』と言えばいい」
ロイは振り返りテントから出て行った。出ていく際にこう言い残した。
ロイ「目を覚ませ、峰崎中佐!我々の生活を脅かす者は意外とすぐそこまで迫って来ている」
龍雅は去って行くロイをただ見つめることしか出来なかった。
龍雅の表情はいつも通りの冷静な表情に戻った。
そしてゲンにこう告げた。
龍雅「ゲン爺さん、申し訳ないですが明日にはここを旅立ちます」
ゲン「そうか……わかった」
龍雅の表情には今までには無かった『生気』が出て来たようだった。