「じ、じぃちゃんの息子さんは、確か五十代じゃなかったっけ?たまに経済紙とかに顔出すよな?」
「そうだっけ?まぁ、清香はガールフレンドに産んでもらった子だからね。彼女はまだ若かったし」
それが何か、と平然と俺を見返すじぃちゃんが憎い。
つか、自分の子供を産ませるガールフレンド=女友達って、それは友達の域なのか?
「大人はいろいろあるんだよ」
俺の心の声を見透かしたような日吉さんの声。
「大人の定義が、日吉さんの一人よがりのものでなければいいですけどね」
「少なくとも、君が思い描く大人は大人ではない。ま、脳の活性化のために、たまには盛大に悩んだほうが君にとってはいいかもな」
のんきそうに笑う日吉さんにイラッ。
…今言い合いをするのは俺に不利だ。情報の整理が追い付いていない。ヤツと対峙するには、冷静さとクリアな頭脳が必要なのに。
なので、俺は矛先をじぃちゃんに向ける。
「じゃあ、つまりは今まで俺がじぃちゃんにしてきた説教って、空回りってヤツ?」
ため息をつきたくなる心境とは、こういう気持ちを言うのだろう。
だって相手は手品の種を全部知ってて、おまけに聴衆の中からその手助けをしてたんだぜ?