浩二はいかにもという口調で拓也をにらみ、私の方を見て言った。
「そうだな…。そろそろ行くか。」
「えっ!?待ってよ!!好きな曲くらい教えて。」
私は内心笑っていた。拓也は絶対嘘を吐いたと思っていたから。
「ローズ、後はgood dayかな。俺はインディーズからのファンなんだ。」
そう言うと、浩二に掴まれる様に私の前から消えた。
残された私は、知らない曲を聞かされて立ち尽くしたままだった。私の心に競争心が芽生えた瞬間であった。
それから私は、連絡先も知らない拓也を勝手にライバル視し始めた。今度会ったら…そう思って。
ローズとgood dayが収録されているアルバムを買って聴いたり、アーティスト情報を集めりもした。
それから一週間くらい後、浩二から呼び出しを受けた。いくら慣れてるからとはいえ、仲の良い友達からというのは緊張するもので。
行ってみると案の定であった。
「一緒にいて安心するんだ…。」
浩二は良い奴だし、私も気にはしていた。だが
「あたしは、友情の方が大切だもん…。親友は裏切れないよ。」
浩二には、一年以上も一緒にいる彼女がいた。しかも私の親友である。